〇パチスロ攻略マガジンドラゴン2019年5月号より転載

バイトとは、雇い主が投資を負担し、指示を出して、雇われ側に対価を支払うというシステムである。

打ち子とも言う。

高設定がたくさん見込める状況下では、バイトを使ってより多くの高設定を打った方が収入は増える計算になる。

だがそれは、雇い主にパチスロで勝つ技量があっての話、だ。

 

19歳のヘミ少年に、そんな技量など無いことは本人が一番よく分かっていた。

勝てる技量が無いから、普段パチスロで負けているのだ。

それを見て見ぬふりするほど馬鹿ではない。

そこでヘミ少年は、最もスロ力の高いお兄佐々木にこの日の立ち回りを一任することにした。

この男は3人の中で最もパチスロ歴が長く、知識もある。

ヘミ少年は財布を、お兄佐々木は立ち回りを、ニート大西は情報収集をという布陣で、仙台2日目の実戦に挑むことになった。

佐々木「よし。狙いはカイジとボンバーマンビクトリーだ!」

彼はそう言った。

カイジは4号機のカイジ、設定6が非常にわかりやすいプロ御用達の機種である。

ボンバーマンは5号機ながらペイアウトが115%もある、当時としては相当なハイスペック機種である。

お兄佐々木の機種選択は非常に手堅くクレバーであった。

開店し、それぞれの狙い台に走るヘミ少年たち。

残念ながらカイジは先に入場したお客に取られてしまったが、ボンバーマンは何とか確保することが出来た。

ボンバーマンは佐々木と大西に任せ、ヘミ少年は北斗の拳のシマで高確チェックからスタート。

おおよそ計画通りである。

そして数十分が経っただろうか。

高確カニ歩きに勤しむヘミ少年に、お兄佐々木がやって来てこう告げた。

佐々木「ボンバーマン6だわ」

マジっすか! さすがお兄!

だてに学校サボってパチスロ打ってないぜ!

お前に託して良かったよ!

設定6をツモれてるのであれば、多少投資が嵩んでも大丈夫だ。

すぐさまもっと攻めろと指示を出すお兄。

6をツモっているのになんて冷静なんだ。

ことパチスロにおいてこれほど頼りになる奴はいない。

この言葉を受けてヘミ少年は安心して北斗のリセット漁りを続行。

しばらくすると、今度はニート大西とお兄佐々木が2人揃ってやって来た。

2人「金無くなった」

まあ設定6だってそういうときもあるだろう。

しかしここでヤメる訳にはいかない。

再び2人に金を渡し、続行を指示。

しかしながらこの時点でチームの投資は3万円超え。

若干嫌な汗が出た。

だが、それでも、ボンバーマンは設定6なのだ。

最悪6だけ打てば、大負けすることは無いはずだ。

しかし、次にお兄が放った言葉は、そんな余裕も消し飛ぶ一言だった。

佐々木「やべえぞ。ボンバーマン設定6じゃないかも…」

は? 何言っちゃってんの?

あれだけ自信満々に設定6って言ってたじゃねえか。

ボンバーマンは固いって、朝ドヤ顔で語ってたじゃねえか。

この時すでにチームの総投資は6万円。

急転直下、窮地に追い込まれたヘミ少年に、ニート大西は問う。

大西「設定6っぽくないけど…まだ追う?」

なぜそんな分かり切った質問をするのか。

人の金をなんだと思っているのか。

すぐさまボンバーマンをヤメさせ、膨れ上がった負債を取り返すために足掻くヘミ少年たち。

ニート大西の北斗に良い台があるかも という言葉を信じ、藁にもすがる思いで北斗の拳を打ち散らかしたものの、終わってみればこの日はマイナス7万円という大惨敗であった…。

2日目にして仙台旅打ちは終焉の刻を迎えていた。

どうする? 明日も打ちに行く?

無一文の2人が、大敗を喫し顔面蒼白のヘミ少年に尋ねる。

明日負ければ全てを失いかねなかったが、ヘミ少年はこう答えた。

ヘミ「…取り返すべ」

もう引くことは出来なかった。

だが、この諦めの悪さが翌日奇跡をもたらすことになろうとは、この時の彼らに知る術は無かった…。

 

今回の格言
これ絶対6、略して「こぜ6」
鵜呑みにするな

ボンバーマンビクトリー（Sammy）

2006年5月導入。

当時の5号機は設定6でもペイアウト110%に満たない機種が主流だった中、RT延命打法によってペイアウト115%を実現した機種。

RT中のナビ回数振り分けにも大きな設定差があり、早い段階で高設定と判断することも可能。

お兄が数十分で「こぜ6」と言った理由は、そこにあったのかもしれない。

確かにあの2人は自分よりパチスロが上手い。

しかし思い出そう、あの2人もパチスロで散財しているということを。

勝てていない者から、勝ち方を学ぶことは出来ないのだ。

(C)HUDSON SOFT (C)Sammy